2月21日 NOAH「KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST” LOVE ~HOLD OUT~」東京ドーム 30096人
(試合内容は実況ツイートより)
<MASTER STAGE第8試合 PRO-WRESTLING “LAST” LOVE 60分1本勝負>
〇内藤哲也(26分58秒 片エビ固め)×武藤敬司
※デスティーノ
<フィナーレ 時間無制限1本勝負>
〇蝶野正洋(1分37秒 STF)×武藤敬司
武藤敬司引退興行「KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST” LOVE ~HOLD OUT~」が東京ドームで開催され、引退の日を迎えた武藤は引退試合の相手を武藤に憧れてプロレスラーになった世代の代表して内藤を指名、メインで対戦となった。
開始となると、ロックアップから武藤が押し込んで内藤が体を入れ替えブレークしつつ足を取るがレフェリーに注意され、武藤がグラウンドを仕掛けてヘッドロックを仕掛けると、内藤はタックルからレッグロックに対し、武藤はキーロック、抜けた内藤はヘッドロックに対し、武藤がアキレス腱固めを仕掛け、内藤もアキレス腱固めを仕掛けるが武藤がヒールホールドを仕掛け、内藤はロープエスケープして場外へ出る。
リングに戻ってフィンガーロックも武藤がダブルリストアームサルト、首投げからフラッシングエルボー、STF捕らえる。
ロープエスケープした内藤はボディーブロー、首投げから武藤の背中へドロップキック、武藤を場外へ出して寝そべりフェイントで牽制すると、戻ろうとしない武藤を強襲し花道へ上げるとコリエント式を狙うが武藤は抵抗、しかし座り込んだ武藤にドロップキック、花道ダッシュで武藤の腰へドロップキックを放つ。
リングに戻ると、内藤がレッグシザースレッグロックで捕らえ、武藤はロープエスケープするが、内藤はコーナーミサイルを命中させ、武藤は場外へ逃れても、追いかけた内藤は膝を踏みつけてレッグロックで攻める。
武藤をリングに戻した内藤はエプロンに上がると、で武藤は低空ドロップキックからドラゴンスクリュー、ドラゴンスクリューから足四の字固めで反撃し、内藤はロープエスケープ、武藤は低空ドロップキックからドラゴンスクリューは、内藤がサミングから延髄斬りで阻止し、再びレッグシザースレッグレッグロックで捕らえて、武藤はロープエスケープする。
内藤は首へ引き込みエルボーを連発するが、武藤は橋本真也の袈裟斬りチョップからDDTで反撃し、実況席で試合を見守る蝶野正洋も目が潤んでいる中で、武藤は三沢光晴のエメラルドフロウジョンも決める。
武藤はシャイニングウィザードを炸裂させると、!シュミット流バックブリーカーからムーンサルトプレスを狙おうとしたが出来ないと断念し、串刺しシャイニングウィザードから雪崩式フランケンシュタイナーを狙うも。下からすり抜けた内藤は武藤の膝裏へドロップキックからエスペランサを決める。
内藤はコリエント式デスティーノを狙うが、武藤は低空ドロップキックで迎撃してからドラゴンスクリュー、足四の字固めで捕らえるが、内藤は必死でロープエスケープ。武藤はドラゴンスクリューからシャイニングウィザード、後頭部へシャイニングウィザード、プロレスLOVEからシャイニングウィザードを炸裂させるが、カウント2でキックアウトされる。
武藤は再びシュミット流バックブリーカーからムーンサルトプレスを狙うが、断念してコーナーから降りたところで、内藤が低空ドロップキックからドラゴンスクリュー、掟破りのシャイニングウィザード、足四の字固めと、掟破りの武藤ムーブで反撃し、リング中央のため武藤はロープへ逃げられない。
そこで足四の字を解いた内藤が武藤の後頭部へシャイニングウィザードから、シャイニングウィザード、そして自身の必殺技であるデスティーノで3カウントを奪い、武藤を介錯した。
試合後には内藤と武藤がグータッチでエールを交わし、武藤がロープを開いて、内藤はセコンドにいた鷹木信悟、SANADA、高橋ヒロム、BUSHIと共に退場する。マイクを持った武藤は「武藤敬司最高のプロレス人生でした!」「自分がいなくなってもプロレス界はますます驀進していきます!」とアピールするが、「自分はまだ歩けるとしてやりたいことがある!蝶野と一騎打ちを要求し、実況席で解説していた蝶野も驚きつつ腹を括ってリングに上がり、レフェリーも武藤の指名で来賓席に座っていたタイガー服部、実況も蝶野の指名でゲスト解説に招かれていた辻よしなりさんが務めることになった。
蝶野は背広とサングラスを取って試合開始となり、ロックアップになると、蝶野がサミングからシャイニングケンカキックを炸裂させ、STFで捕らえて武藤がギブアップとなり、サプライズ的に行われたボーナストラックは終了となった。
蝶野が歓声に応えて放送席に戻ると、入れ替わりに古館伊知郎さんが武藤に捧げる詩を朗読する。
HOLD OUTが鳴り響く中、武藤は花道を歩き、ステージにたどり着いて振り返ると、味方リングアナのコールでステージにはパイロが吹き上げられ、武藤はバックステージへ消え、スクリーンには「プロレスLOVEの文字と共に三沢、橋本、武藤の写真が映し出される中、引退試合を終えた。
足を肉離れという最悪のコンディションの中、武藤がどこまで仕上げてくるかに注目したが、リングに上がると自然と身体が動いてしまうのか、一瞬の隙を逃さず反撃するという武藤らしさを見せるも。最後でムーンサルトプレスを出すかを迷ったところで内藤に一気に攻め込まれた。内藤の足四の字に捕まった時点でレフェリーストップになってもおかしくはなかったが、レフェリーストップでは介錯にならないと考えたのか、敢えて武藤の技であるシャイニングウィザードから自分の技であるデスティーノで3カウントを奪う武藤を介錯した。内藤にしてみれば、オカダ・カズチカからIWGP世界ヘビー級王座を取るよりも、武藤を介錯する方が重く、価値のあるものだったのかもしれない。
武藤敬司はジャイアント馬場さんと同じメジャーリーガーで、馬場さんが力道山から基本的なものは教わったが、応用的なものはアメリカから学んだことで、馬場さんは力道山のプロレスじゃなく、アメリカンプロレスをベースにして全日本プロレスを旗揚げした。
武藤も基本的なことは新日本プロレスで教わったが、すぐ海外へ出されたことで応用的なものはアメリカで学んだ。そういった意味では武藤はアントニオ猪木的な考えはあるが、プロレスに関しては馬場さん寄りで、猪木の考える格闘技には興味を示そうせず。馬場さんが考える「殴ったり蹴ったり、極めたり跳んだり、プロレスには格闘の全てがある、フォールを奪うという部分もある、奥が深いものなんだよ」と、武藤が馬場さんの考えるプロレスに傾向していった。だから猪木は格闘技より馬場さんの考えるプロレスに傾向した武藤を良く思っていなかった。
猪木は武藤が新日本プロレスから全日本プロレスへ移ると、猪木は新日本プロレスを格闘色に染めようとしたが、ファンから拒絶されたことで猪木体制の新日本プロレス崩壊に拍車をかけた。この頃には猪木も引退し、自ら身体を張って自分のプロレスはこうなんだって伝えることが出来なかった。だが武藤は現役だった分、身体張って自分のプロレスを示すことが出来たことで、ファンから支持を得ることが出来た。
猪木が新日本プロレスを去った後、新日本プロレスは武藤の考えるプロレスを新日本プロレスの新しい土台として求めた。そして武藤をベースにして新日本プロレスがアレンジしたものが、現在の新日本プロレスであることから、武藤も新日本プロレスV字回復の立役者の一人でもあるのだ。
しかし武藤個人としては全日本プロレスの経営には悪戦苦闘した。昔のアメリカンレスラーは自分のオフィス(団体)という一国一城を持つことがになることが一流とされており、ブルーノ・サンマルチノやジン・キニスキー、フリッツ・フォン・エリック、ファンクス、ザ・シークもオフィスを持っていて一国一城の主となった。武藤が新日本プロレスを離れて全日本プロレスに移籍した理由は、全日本プロレスに必要とされただけでなく、自分のオフィスを持って運営することが一流の証というものに憧れていたからかもしれないが、武藤が独立した頃のアメリカはそんな考えは古いものとなっていた。それは武藤自身だけでなく、先に独立した橋本真也、三沢光晴が団体を運営することで一番身に染みるほどわかったのかもしれない。
WRESTLE-1を終えた武藤はNOAHに迎え入れられることになった。CyberFight体制になってから2年目となったNOAHにしてみれば、野球でいうフリーエージェントで長嶋茂雄級の大スターを獲得したようなものだった。武藤のNOAHでの役目は新しいNOAHのベース作りで、NOAHのアイコンとなって集客力に貢献するだけでなく、かつての新日本プロレスように、新しいベースを作り一度潰れたNOAHを再生させること、しかし再生の役目を充分に果たせかはわからないが、清宮海斗を含めたこれからの選手が武藤の役目を受け継ぎ、NOAHの再生と発展の役目を担っていくだろう。
そして武藤敬司が引退するが、それは昭和の幕引きではなく、武藤だけでなく橋本真也、蝶野正洋の闘魂三銃士、三沢光晴、川田利明、田上明、小橋建太が築いていった1990年代のプロレスの幕引きであり、武藤敬司は1990年代の最後のスーパースターだった。
武藤敬司選手、お疲れさまでした。